
さらに進むダウンサイジング
さらに望まれる高度利用
当岩手県産業情報センターの経営動向調査によれば、県内企業の景況は平成9年1月を機にあらゆる業種にわたって底の状態におちいり、その後一進一退を続けながらも、基調としては未曾有の厳しさの中にある。 この厳しい景況下にありながらも、本県の中小企業におけるコンピュータの導入は滞ることなく増加しており、その割合は72.9%に達していることが、当センターの調査でわかった。 この調査は、調査時点が平成10年5月1日、調査対象企業は当センターが毎月実施している経営動向調査の対象企業1,353企業である。回収サンプル数は624企業で、回収率は46.1%であった。回答企業の業種別等の構成割合は表1のとおりである。
図1は、コンピュータを導入している企業、導入意思のある企業、導入意思のない企業について、83年から98年までの推移を表している。当初25%に満たなかった導入企業の割合が前回調査で70%を超え、今回はさらに2.6ポイント増え72.9
%になった。

表1は、業種別等でコンピュータの導入、未導入の状況を表している。これを導入率に絞って、まず業種別にみれば、建設業の導入率が一番高く、次いで製造業となっている。従業員規模別、年間売上高別では、予測されるとおりいずれもその規模が大きくなるに従って導入率は高くなっている。
生活圏別の導入状況は今回から調査項目にしたが、二戸地区が特に高く、以下盛岡地区、両磐地区等である。反対に低い地域は、釜石・遠野、気仙、宮古の沿岸地域で、いずれも導入率が平均を下回っており、地域間で格差のあることが推測される。
表1 回答企業の内訳、導入・未導入状況 (単位:%)
|
回答企業の
内訳 |
導入企業 |
未導入企業 |
導入意志の
ある企業 |
導入意志の
ない企業 |
鉱業 |
2.2 |
71.4 |
28.6 |
7.1 |
21.5 |
建設業 |
12.8 |
90.0 |
10. |
3.8 |
6.2 |
製造業 |
36.1 |
79.1 |
20.9 |
9.8 |
11.1 |
卸売業 |
10.6 |
69.7 |
30.3 |
12.1 |
18.2 |
小売業 |
25.5 |
61.0 |
39.0 |
6.9 |
32.1 |
運輸・サービス業 |
12.8 |
65.0 |
35.0 |
8.8 |
26.2 |
1〜9人 |
29.8 |
37.1 |
62.9 |
10.2 |
52.7 |
10〜19人 |
16.7 |
72.1 |
27.9 |
14.4 |
13.5 |
20〜29人 |
13.8 |
84.9 |
15.1 |
14.0 |
1.1 |
30〜49人 |
13.3 |
90.4 |
9.6 |
4.8 |
4.8 |
50〜99人 |
13.8 |
98.8 |
1.2 |
1.2 |
0.0 |
100〜299人 |
10.9 |
98.5 |
1.5 |
1.5 |
0.0 |
300人以上 |
1.8 |
100.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
5千万円未満 |
14.6 |
22.0 |
78.0 |
11.0 |
67.0 |
5千万円以上 |
10.9 |
47.1 |
52.9 |
11.8 |
41.1 |
1億円以上 |
15.5 |
69.1 |
33.4 |
12.4 |
21.0 |
2.5億円以上 |
19.1 |
84.0 |
16.0 |
10.9 |
5.1 |
5億円以上 |
13.5 |
90.5 |
9.5 |
7.1 |
2.4 |
10億円以上 |
25.3 |
96.8 |
3.2 |
1.9 |
1.3 |
不明 |
1.1 |
96.2 |
3.8 |
1.9 |
1.9 |
盛岡 |
25.0 |
82.1 |
17.9 |
7.7 |
10.2 |
岩手中部 |
16.3 |
74.5 |
25.5 |
8.8 |
16.7 |
胆江 |
12.7 |
74.7 |
25.3 |
3.8 |
21.5 |
両磐 |
9.8 |
78.7 |
21.3 |
9.8 |
11.5 |
気仙 |
9.1 |
59.6 |
33.4 |
7.0 |
26.4 |
釜石遠野 |
10.4 |
55.4 |
44.6 |
9.2 |
35.4 |
宮古 |
6.9 |
60.5 |
39.5 |
16.3 |
23.2 |
久慈 |
4.5 |
75.0 |
25.0 |
14.3 |
10.7 |
二戸 |
5.3 |
96.2 |
3.8 |
1.9 |
1.9 |
合計 |
100.0 |
72.9 |
27.1 |
8.3 |
18.8 |
図2は、業種別のコンピュータ導入率にあわせてインターネットの利用率を表している。製造業と卸売業が、コンピュータ導入率に比べ、インターネットの利用率は高いのが目につく。逆に、建設業は導入率の割に、インターネットの利用率は低い。

図3は、これの生活圏別であるが、コンピュータ導入率、インターネット利用率のどちらも平均を超えている地域は、中部、胆江、二戸である。ここでも二戸地区におけるインターネットの利用率が高い。反面、意外にも盛岡地区のインターネット利用率が平均以下である。

図4は、「使用しているコンピュータの種類」を表している。前回調査に引き続き、汎用コンピュータとオフコンは減少を続け、反対にパソコンは着実に増加しており、一層のダウンサイジングが進んでいる。また、POSは微増しているが、EOSとCAD/CAMは微減しており、一定の傾向などはうかがわれない。

図5は、95年からの新規調査項目であるが、パソコンの使用形態である。「スタンドアローン」の形態が減り、その分「社外ネットワーク」および「LAN」による形態が徐々に増えている。

図6と図7はインターネットの利用状況と利用の内容を表している。1年前の調査に比べ、「利用している」はちょうど8ポイント伸びており、「検討中」を含めると60.4%の高率になり、インターネットに対する関心の高さがうかがわれる。利用の内容では、「情報収集」のほか、「電子メール」の積極的な利用も高率である。


図8は、未導入企業におけるインターネットへの関心度を示している。「関心がある」と「少しは関心がある」の合計は65.7%である。一概にはいえないが、このことからコンピュータを未導入の企業において、インターネットを利用しないことにより迅速、的確な情報収集ができず、経営上の障害になる等のおそれを抱いている結果の表れかとも推測される。また、未導入企業が、コンピュータは自社の事務処理としては不要であるが、情報収集・発信の機器としては必要との意図があることをも推測でき、ひいてはコンピュータの利用目的そのものが変化する兆しをうかがわせる。

コンピュータ化している業務を、業種別に図9、従業員規模別に図10で表している。
まず、業種別の状況であるが、「総務的業務」は業種を問わず必要な業務であるので、全体として高率であるが、小売業は若干下回っている。建設業ではCAD/CAMを含む「技術系業務」が90.3%と高いが、反面、「基幹業務」は37.5%と低い。製造業では「技術系業務」と「基幹業務」が平均を上回っており、それ以外の業務でも若干平均を下回る程度である。卸売業では、「基幹業務」、「ネットワーク」、「データ活用」が大きく平均を上回っており、情報を高度に利用している状況が
次いで、従業員規模別の状況であるが、全業務を通じて規模が大きくなるに従いその率も高くなる傾向がある。例外的に「基幹業務」が、中堅規模の「30〜49人」と「50〜99人」において平均以下であるのが目をひく。また、「50〜99人」以上の規模にあっては、データ活用の割合が平均を上回り、規模が大きくなるに従い割合が高くなっている。また、「100〜299人」と「300人以上」では、コミュニケーションが平均の2.5倍ないしは2.9倍と、ここでも従業員規模が大きい企業における情報の高度な利用の実態がみることができる。
なお、今回の調査からコンピュータ化業務の選択肢を「総務的業務」「技術系業務」等と包括的な表現にした。


建設業で高い 技術系業務のコンピュータ化 表2から表5は、業種の特性を考慮し、従業員規模別の利用状況(コンピュータ化している業務の割合)をみたものである。
表2は、建設業におけるCAD/CAM、設計用ソフトなど技術系業務のコンピュータ化している業務の利用状況である。規模の大小を問わず80%〜100%の範囲にあり、建設業は技術系業務に関しては相当にコンピュータ化が進んでいる。
表3は、製造業における販売管理・生産管理等基幹業務のコンピュータ利用状況である。平均は78.7%と比較的高いが、「1〜9人」はさておき、「20〜29人」「30〜49人」「50〜99人」といった中堅規模の企業が平均以下であるのが気にかかる。
表4は、卸売業におけるデータ活用の利用状況である。回答企業数が少ないことを配慮しこれをみれば、従業員規模が「30〜49人」と「50〜99人」を境にして、データ活用の程度が大きく違っていることがうかがわれる。
表5は、小売業におけるデータ活用の利用状況である。この表からは、規模の大小にかかわらず厳しい経営環境下、生き残りをかけ「売れ筋情報」等データを活用している小売業の姿が浮かんでくる。
表2 建設業における技術系業務の
コンピュータ利用(従業員規模別)
|
利用率 |
導入企業数 |
回答企業数 |
1〜9人 |
80.0 |
4 |
5 |
10〜19人 |
90.0 |
9 |
10 |
20〜29人 |
81.8 |
9 |
11 |
30〜49人 |
90.0 |
18 |
20 |
50〜99人 |
95.0 |
19 |
20 |
100〜299人 |
100.0 |
6 |
6 |
平均 |
90.3 |
65 |
72 |
|
表3 製造業における基幹業務の
コンピュータ利用(従業員規模別)
|
利用率 |
導入企業数 |
回答企業数 |
1〜9人 |
61.5 |
8 |
13 |
10〜19人 |
83.3 |
25 |
30 |
20〜29人 |
71.4 |
25 |
35 |
30〜49人 |
73.3 |
22 |
30 |
50〜99人 |
77.1 |
27 |
35 |
100〜299人 |
93.5 |
29 |
31 |
300人以上 |
100.0 |
4 |
4 |
平均 |
78.7 |
140 |
178 |
|
表4 卸売業におけるデータ活用の
コンピュータ利用(従業員規模別)
|
利用率 |
導入企業数 |
回答企業数 |
1〜9人 |
44.4 |
4 |
9 |
10〜19人 |
10.0 |
1 |
10 |
20〜29人 |
50.0 |
4 |
8 |
30〜49人 |
42.9 |
3 |
7 |
50〜99人 |
83.3 |
5 |
6 |
100〜299人 |
75.0 |
3 |
4 |
300人以上 |
100.0 |
2 |
2 |
平均 |
47.8 |
22 |
46 |
|
表5 小売業におけるデータ活用の
コンピュータ利用(従業員規模別)
|
利用率 |
導入企業数 |
回答企業数 |
1〜9人 |
27.3 |
9 |
33 |
10〜19人 |
50.0 |
10 |
20 |
20〜29人 |
62.5 |
5 |
8 |
30〜49人 |
0.0 |
0 |
5 |
50〜99人 |
61.5 |
8 |
13 |
100〜299人 |
53.3 |
8 |
15 |
300人以上 |
66.7 |
2 |
3 |
平均 |
43.3 |
42 |
97 |
|
図11は、コンピュータ導入の目的、導入後の効果と導入目的の達成率を表している。「事務作業の迅速化・正確化」は目的、効果、達成率ともに高く、コンピュータの能力の一面は充分に活用している。しかし、「コストダウン・人員削減」を目的にしながら効果があったとしたところは57.7%と低く、一般にコンピュータはコストダウンにならないと言われることを裏付ける形となった。
一方、「資料・情報収集力の向上」と「判断・意志決定の迅速化・正確化」は目的・効果ともに20%前後にとどまっており、今後はこれら高度な利用の増加が望まれる。また、「企業イメージの向上」、「社員モラルの向上」の率の低さは、今やコンピュータの導入が、差別化を図る手段ではないことを示している。

図12は、導入にあたっての検討事項を、当初導入時と次期導入時に分けてきいた結果である。まず、導入時では「コンピュータ化業務の選定」をはじめ半数以上の事項が次期導入時におけるそれより大きい。これは、一応コンピュータを使いこなす基本的なことを修得したことの表れであろう。しかし、全体として率は低いものの「社内の運用体制」と「コンピュータ要員の確保」は、次期導入時にあっては当初導入時の2倍以上になっており、コンピュータ導入に際しての「人」の重要性をあらためて思い知らされる。

「コンピュータ西暦2000年問題」 経営者は7.9%が知らない |
図13は、いわゆる「コンピュータ西暦2000年問題」が、どの程度知られているかを役職別にみたものである。「システム部門」と「その他」では全員が知っており、「経営者」では7.9%も知らないとしているが、企業にとっては由々しき問題であるので、経営者層への啓蒙が急がれる。 なお、本記事は概略のみであるので、その詳細をお知りになりたい方は当センターまで連絡してください。


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