情報化企業の紹介(3/3)
特集●情報化企業の紹介


2.システム導入による効果

 この情報システムを利用しないと受注から出荷までの作業を円滑にできないほど頼りにされる仕組みとなった。システム導入の結果は次のとおりである。

(1) 2000年問題をクリアー
 新しいシステム環境のもとに情報システムを構築することにより、コンピュータ2000年問題を解決することができた。

(2) 転記ミスの減少
 データを再利用する仕組みを作りこれをコンピュータ化することにより、転記ミスがなくなり事務作業の省力化が実現できた。

(3) 管理者の作業指示の正確化
 管理者の作業指示が、ライン別生産予定表や外注鋳造予定表などを活用してなされるので、指示が迅速かつ正確になった。

(4) 顧客サービスの向上
 工場内に情報インフラを整備したことにより、顧客からの進捗情報問い合わせにスピード対応し顧客サービスを向上することができた。

3.今後の課題

 機能の追加および運用上の留意点は次のとおりである。

(1) 在庫管理業務の情報システム化
 在庫管理業務の精度向上と省力化が要求されている。そのためには、入出庫処理・棚卸処理のプロセスを整備して情報システム化し、在庫管理業務のさらなる精度アップを実現する。

(2) 原価管理業務の情報システム化
 現在の経営環境では、原価の大幅な低減を要求されている。これに応えるためには、管理目的の原価管理が望まれる。そのためには、まず、簡便でかつスピードを重視した製品別の実際原価の算出方式を決める必要がある。
 たとえば、ライン別に単位時間あたりの社内加工費を過去の実績データから算出しておく。製品毎の社内加工費は、これにラインの実稼動時間を乗じることにより求め、これに製品毎の変動費を賦課することにより製品別の実際原価を求める。このようにして算出した製品別実際原価を標準原価と突き合わせてチェックし、原価の低減や製品戦略に利用する。

(3) 情報システムの文書整理
 パッケージプログラムの利用でなく、自社でシステムを開発する場合には、しばしばシステムのドキュメントを作成せずにシステムが構築されることが多い。情報システムを開発担当者以外の者でも円滑に運用・保守出来るようにしておくことが重要である。
 そのためには、システム概念図・業務フローチャート・データフローダイアグラムなどの文書を整備し、システムのレベルアップ作業や保守がやりやすい状態にしておくことが望まれる。

(4)情報を活用する企業風土の育成 
 情報システムは、業務の担当者がこれを利用して初めて効果が出る。従って、情報化担当者は、繰り返し繰り返し情報システムの必要性や便利さをPRし、情報システムを活用する企業風土を育成することが望まれる。特に、経営トップが率先して情報ツールを活用し、情報システムを使いこなすとその効果は大きい。

(5)企業内外の情報基盤の確立
 生産管理業務の情報システム化をさらに進め、企業内の情報インフラを完成して、各部門が情報を共有して生産効率を上げることが望まれる。つづいて、共通情報インフラとして成長したインターネットを利用して外部と情報を瞬時に交換する仕組みを作る。これにより工場管理を有視界飛行から計器飛行に転換すれば、計数に基づいた経営の実践が可能となる。

(中小企業診断士 大島 秀一郎)





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