この情報システムの仕組みそのものは目新しいものではないが、その背後にある考え方が当社の経営理念の根幹をなしている。それは「現場管理の基本は安全衛生管理にある。」ということである。建設業の現場は常に危険と隣り合わせであり、事故・災害を起こさないよう最大限の努力をすることはもとより、もし万が一起きた場合には、早急に救助などを行う必要がある。特に当社は前述のとおり、港湾工事も行っているので津波や高潮の心配があり、社員の勤務場所や現場の状態の把握が必要になっている。それが5分に1回という頻度のデータ収集に結びついていくのである。そして、安全衛生体制の確保は社員全員の責任であり、現場の社員はもちろんのこと、本社勤務の社員も現場の状況が把握できるように情報システムを構築していくことが当社の情報化の原点にある。 もちろん、現在では安全衛生体制の確保だけがこのシステムの目的ではなく、日報管理システムや就労管理システムと連係することで「工事原価管理」や「予算管理」の正確化に貢献している。そして、総合的な品質確保のためにも、「誰が」、「どこで」、「どのような仕事をしているのか」を把握することは重要であり、出退勤情報システムは必要な情報を提供してい る。 このように、社員の安全確保からスタートした出退勤管理情報システムを中心とした企業情報システムが体系化され、今日に至っている。 |
(2)さらにスピード経営を心がけたいが、情報システムの方はコストをかければいくらでも良いものが作れる反面、社内整備がまだ追いついていない。 (3)原価管理についてはまだまだ改善すべき点があり、原価管理システムの改善は継続的に行う必要がある。 (4)ISO9000の認証後は品質管理システムをサポートする情報システムも考えていきたい。 |
本社要員と管理・監督者以上は全員がコンピュータ操作に熟達しているが、社員全員がコンピュータの操作ができるわけではないし、会社としてもそれを望んでいるわけでもない。業種特性から一般的な意味でのコンピュータ能力を必要としない部署もある。そのため、当社はコンピュータ操作が苦手な社員がいることを前提に情報システムを構築している。例えば、社員にキーボード入力してもらうより、OCR用紙に記入してもらうほうが正確でかつ効率的ではないかと考えて、現在のOCR入力方式を導入するきっかけになった。 (2)情報の共有 情報管理の一環として、外部情報の収集のため新聞の切り抜きを事務部門で行い、その中から社長がセレクトしたものをスキャナーでパソコンに取り込みファイリングを行っている。これも将来的には掲示板に貼り付けて、社員全体で利用したい。 (3)システム開発体制 当社には常設の情報システム担当部門は組織されていないが、事務・現業部門で情報システムに問題が発生したときは、ただちにベンダーと連絡をとり機動的に問題に対処できる体制がとられている。 今回の再構築に際しても、ベンダー側の企画提案に対して、当社側は経営者を含んだ各部門の担当者が検討を行い、要望の逆提案を行う形で何度もやり取りを行った。このように多数の者が関与することにより、情報システムの問題は他人事ではなくなり社員の参画意識が生まれてきている。そして、社員の全体的な情報能力も向上している。 (4)べンダーとの協力関係 当社も勉強するが、ベンダーにも広い視野で勉強してもらってシステムを構築してもらいたい。したがって、当社との協力関係を通じて相互に利益が生まれることを理解してもらうことが、ベンダー選定基準の一つになっている。 |
(中小企業診断士 佐々木 貢) |
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